|
第5回:技術の民主化 (その4)
2000年に音声トラヒック(電話)を超えた非音声トラヒック(データ)は、その後も増え続け、今日ではネットワーク上のトラヒックの80%以上を占めるようになりました。そうなると、もともと音声を効率的に運ぶように最適化された電話網を利用して非音声を運ぶことは非常に効率が悪いことになるわけで、むしろデータや画像を効率的に扱えるネットワーク(すなわちインターネット)を作り上げ、そのなかで音声も運ぶようにしたほうが、はるかに経済的かつ効率的であることが明らかになってきたわけです。今日多くのユーザが利用しているIP電話はこのような背景から登場してきたものです。音声をデジタル化しパケットにして送受信するためにはかなり高度な仕組みが必要ですが、高価な電話交換機などの設備が必要なくなることにより、経済的に非常に優れたネットワークが構築できるわけです。
世界各国の主な電話会社(NTT、AT&T、ブリテッシュテレコムなど)はIP電話の普及は電話収入の大幅な減少に結びつくことから、いろいろな理屈をつけてIP電話に反対あるいは消極的な態度を取り続けてきましたが、技術の民主化の潮流には勝てず、ついに全世界的なIP電話網の構築にむけて協力していくことで合意しました。
100年以上に及ぶ電話ネットワークの歴史はおそらく今後10年以内に主要な国々ではその使命を終え、あらたに全IPネットワークに置き換えられることになると思われますが、その過程においては従来からある大電話会社(ドミナント・キャリアと呼ばれます)と新興のキャリアの間でさまざまな形での利害の衝突や駆け引きが行われることになると想定されます。なぜならば、ドミナント・キャリアは急激な収益構造の変化を避けたいのに対し、新興キャリアはこの機会に一気シェアの拡大をはかりたいと考えるからです。

