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日本人の労働観 その3
さて、第3回目は「宵越の銭はもたねえ」という江戸時代の流行文句について考えてみたいと思います。
前回、金銭脱却主義という話をしていきました。これからの日本が舵を切り直す方向は、金銭脱却主義の時代です。このような時代は、かつてわれわれの過去の時代に確かに存在していました。それは、日本がもっとも日本らしかった時代「江戸時代」の庶民の仕事観、この「宵越の銭はもたねえ」という流行文句に代表されます。
それでは、この時代の特に職人の仕事観とはどのようなものだったのでしょうか?アメリカの社会学者ライトミルがこの時代の職人の仕事観について6つの特徴を述べています。
1.労働そのものの喜びと生産物への期待
(名声や名誉ではない)
2.生産者と生産物との心理的結合
(職人は完成した生産物を想像して喜びを得ていた。そして生産物に美的充実感を得ていた)
3.労働の主人足り得る
(コンピューターに支配されているのではなく自分自身が労働の主人である)
4.仕事を通して技術向上と人間的成長とが結びついている
5.芸術家と同じように価値の創出と自己表現の場である
(労働であって遊びである職人的行為は教養の手段)
6.労働は唯一の動機である
(暇なときの雑談でも仕事の話をしている)
みなさん、いかがでしょうか? この頃の職人は金や機械に支配される労働ではなく、真に仕事そのものがよろこびであった時代だったのではないかと思います。この「宵越の銭はもたねえ」という金に縛られない人間主体の世界がそこにはあったのだと思うのです。
つまり、江戸時代は何事にも縛られない「粋の世界」ですね。私たちは、目に見えるお金や名誉というものに多大なエネルギーを費やしてきました。しかし、そのような国や企業は長い目で見ると、やがて疲れ果て、結局は効率を追い求めたはずが、かえって非効率な国、企業になっていないでしょうか?
「日本の自殺者は32,552人」「ニートは64万人」――経済大国になるために、その代償として失ったものは、はるかに大きいと私は考えています。これと同じようなことは環境問題でもいえます。
先日ある講演でパネラーの方が、こんなことをいっていました。
「私たちは、今までお金になるものばかりに目を向けてきた。しかし、自然や環境というものは、今までの資本主義の過程では地球からタダでいただいても良いのだという考えがまかり通っていました。この結果、食料から原材料まですべてのものが高騰しています。今、世界経済はおかしくなっているのです。これからは、このお金に換算できない経済、すなわち環境などの外部経済にも目を向けていくべきだ」
かつての日本の姿、江戸時代のように非金銭的報酬にも目を向け、あなたの会社の非金銭的報酬がどのくらい高まったかを常に経営者が意識しておくことは、どのくらい「金が儲かったか」ということを意識するのと同じくらい、いや、それ以上に大切な時代がやってきているのかもしれないと私は思っています。
それが結果として、あなたの会社が永続的に繁栄していくことになるのではないか? と考えます。

