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株式会社ニッセン(東証1部)社外監査役
(株)ワイズ・ステージ代表取締役

高橋宜治 先生

プロフィール

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労働CSRを考える(1)

ミートホープの事件は、「まだこんなことがあったのか」と唖然としてしまう事例である。このような企業の不祥事があるたびに、企業の社会的責任についての論議が交わされる。この事件は、商品の偽装のほか、その製造過程の法令違反、さらには同族経営上考えられるさまざまな疑問などを投げかけた。

しかし、雇用問題の担当としては、責任を工場長に転嫁しようとした経営者の無責任な態度、さらには会社閉鎖を宣言し、何の説明もなく全従業員を解雇するという、まさに傍若無人な態度に唖然とすると同時に、怒りを感じるのである。そこで、これから数回にわたり、企業の社会的責任の中で特に労働問題に焦点をあてた「労働CSR」という話題を論議していきたいと思う。

労働CSRの分野は、大きく以下の6つの観点がある。
1.法令遵守や企業倫理といった分野
2.労使の関係や安全衛生に係る分野
3.差別問題を中心にした雇用に分野
4.セクハラ・パワハラといった人権問題の分野
5.社員のボランティアなどを含む社会貢献に関する分野
6.ワークライフバランスを含む企業の人材投資に関する分野
ひとつの不祥事が発生したときには、これらの分野が複合的に絡むことが多いようである。

このミートホープを例にとれば、偽装という部分では、法令遵守(雇用関連ではなく)や企業倫理的観点、工場長への責任転嫁は、上位者のパワーハラスメントである一方、工場長側からすれば法令遵守や企業倫理も絡む。また、いきなりの全員解雇は労働法の法令遵守に絡むと同時に、企業の本質的社会的責任の問題でもある。このように、幾つかの分野が関連するのである。

今回は、第1回ということで、労働分野に限らず、企業の社会的責任について簡単に俯瞰をしてみたい。
少し前の調査ではあるが、2003年に経済同友会が行った日本企業のCSR調査によると、経営者が考えるCSRとは、
●より良い商品・サービスを提供する(93.1%)
●法令を遵守し倫理的行動をとる(81.4%)
●収益を上げ税金を納めること(74.9%)
●株主やオーナーに配当すること(67.6%)
●地球環境の保護の貢献すること(61.9%)
●新たな知識や技術を生み出すこと(51.6%)
●地域社会の発展に寄与すること(51.6%)
●雇用を創出すること(48.0%)
●人体に有害な商品・サービスを提供しないこと(45.4%)
●人権を尊重・保護すること(32.3%)
●フィランソロピーやメセナ活動を通じて社旗に貢献すること(21.8%)
となっている。

印象的には、これから論議していく労働分野が下位項目に多く、社会的責任論では軽視(?)されているのかな、ということ。
これは、雇用問題を中心に企業の社会的責任論を展開してきたヨーロッパ型CSRよりも、ベトナム戦争をきっかけに、ステークホルダー、特に株主を意識してきた米国型CSRに影響を受けてきたことによるものと思われる。

また、これまでは日本社会として、水と同様に人材(人手)は無尽蔵にあるとの無意識の誤解と運命共同体的な企業慣習の中で、雇用に関する企業の社会的責任意識が希薄であったことによるものであろう。

団塊の世代の大量退職時期を迎えて労働力不足が昨今話題になっているが、労働に関する企業の社会的責任はグローバル化と共に確実に重要な企業の課題となってきている。

次回から、この労働に関する企業の社会的責任について論じていきたい。