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【稟議書が回らないお金見逃しシンドローム】
前回から始まった、『 ちょっと待った、ちょっと変だよ、そのコスト削減 』
〜コストが下がらない20の病(やまい)とシンドローム(症候群)〜
栄えある第一回目のシンドロームは、【稟議書が回らないお金見逃しシンドローム】です。
世の中の経営者の中には、「私はボールペンの一本までを自らが必ず稟議書で決裁する。我社の購買には無駄はない。」と自信を持っておっしゃる方がいます。しかし、果たしてそうでしょうか?確かに社長がボールペン1本までを決裁する会社では多分ボールペン購入に際しての稟議書(決裁書)そのものが回ってこないと思います。いちいちとやかく言われたり、証拠として使い尽くした物をチェックするので持ってきてくださいとか言われた日には皆自腹で購入するでしょう。まさにホリエモンの会社がそうでした。
まあ、その分コストが削減できていると言えなくもありません。
しかし、その効果たるやわずかなものです。よっぽどホリエモンのように文房具は全て自分で買ってくださいの方が分かりやすくかつコスト削減効果も比べれば大きいと思います。いずれにしても五十歩百歩ではありますが・・。
一方、その社長さんの会社は間違いなく文房具代よりも電気代、上下水道代、ガス代、電話代を始めとした通信費、コピーの使用料金(カウンター料金)等をその何百倍もの金額で毎月支払っています。しかも稟議書なしで!電気・上下水道・ガス代の合計がエネルギーコスト全体の7割を下っているところなど皆無である日本の工場や、これらのエネルギーコストの売り上げに対する割合が平均でも5%前後は必ずある飲食店においても然りです。
また、訪問販売会社を中心とした営業中心の会社は毎月多額の電話代を支払っていますし、学習塾の支払うコピー代も驚く程の金額です。しかし、これらの経費が毎月稟議書となって経営者の目に触れることは稀です。こんなことを言うと、「電気も上下水もガス代も公共料金だから仕方がないだろう。」「電話もコピーも使わざるを得ないのだから仕方ない・・。」と言った声が聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか?
賢い経営者の方は、現場から稟議書までは上げさせないものの、これらの経費を仕方のない固定費とは捉えずに決算期の始めに昨年のデータを基に予算申請させてチェックしたり、毎月毎月自分なりの物差し(ある基準に基づく数字での比較)を使って常に現場の変化を捉え、改善することに大いに役立てています。つまり、予算や昨年の数字と比べてただ単に増えたから悪い、減ったから善いではないのです。現場をよく知る賢明な経営者ほどいろいろな角度からの分析の指標を持っています。
工場では、どこも製品の製造コストに占めるエネルギーコストの割合を継続的に捉え、改善努力を重ねています。だから、日本の工場はコスト削減力を持っているのです。商業、遊戯施設では稼働率やお客様の数で各エネルギー関連コストを割ってみると、現場におけるマネジメントの状況までもが見えてくることがあります。
あるパチンコ店では、台当たりの稼動率が下がっているのに、昨年と比べて電気代が上がっていました。お客様一人当たりの電気代で見ても、1年前と比べると増えていました。設備も一切増えていないにも関わらず。そこで、現場で原因を探ってみると、新任の若い店長とアルバイト従業員の間のコミュニケーションが悪く店舗が全く持ってマニュアルどおり運営されていない(閉店後も開店時と同じ明るさの電気を点けたまま、だらだら仕事をしている)ことが分かりました。
少なくとも、何十円、何百円の物品購入のための稟議書を書かせることに時間と言うコスト掛けるよりは、「来月は昨年比20%増の生産をするので、電気代もこのまま行くと20%増しになりますが、生産シフトの工夫で夜間の稼働率を上げることで電気代は(夜間の安い電気を使うことで)15%増に抑えられそうです。」とか、「先月の売り上げの落ち込みをカバーすべく今月は前年同月比2倍の売り上げの達成を目指します。そのために電話件数が従来の3倍になりますが、電話会社の変更と、テレアポマニュアルを整備・充実させ、今までの平均3分の会話時間を2分に最適化することで、通信費の伸びは2倍におさめます。」と言う価値ある稟議書をあげるために時間と言うコストを掛けて欲しいと思い、またこの様な稟議書こそ見たいと思う経営者が世の中大半だと思います。
しかし、世の中の経営者であり会社がまだまだここまではできていないのも現実です。これを、【稟議書が回らないお金見逃し症候群】と言います。
そして、日本の地方自治体の殆どはこの症候群の重症患者です。その典型が先だって破綻した夕張市です。ここでは議会や国による財政状況のチェック機能が完全に麻痺していました。つまり税金の使い道と言うまさに経費の使われ方がなんらチェックされていなかったのです。市長、議会、国に正しく稟議書が回ることがなかったのです。自治体会計の破綻。つまり、収入(税収)よりも支払いの方が多くなった結果でした。
私は仕事柄、電力会社とちょっとした協議をするか、もしくは申請のみで直ぐにでも電気代が下がる地方自治体が、予算制のためにコンサルティング会社へのコンサル料が今期は確保できないと言う理由や、削減金額の中から払えばいいと言われても、下がったら来期の予算が減らされることで、コンサル料支払いのための原資が出てこないと言う理由から、極めて簡単で間違いのないコスト削減の機会を未だに失していることを知っています。ひとつやふたつではありません。合併後のローコストオペレーションは行政にこそ必要との思いで、コンサル料や報酬は要りませんから住民のためにもやってくださいと言っても動かない市役所もありました。これが実態です。
一方、群馬県太田市のように頑張っている自治体もあります。ここは、自治体会計だけでなく一歩進めて事業別の収支計算を公表しています。これがとてもわかりやすいのです。学校給食一食当たりの経費がいくら、教養講座の受講者一人あたりがいくらなど、公表の対象も多岐に渡っています。例えば、救急車の出動費用は1回当たり10〜13万円。年間の出動実態と照らし合わせて、「119番のいたずら電話だけで年間6,000万円が吹っ飛びます!と訴えるのです。このことは住民に伝わり、間違いなくいたずら電話や安易な119番の減少に繋がります。平成の大合併後の全国の地方自治体には、早急な回復までは望みませんが太田市のように回復に向けての価値ある第一歩は踏み出してもらいたいものです。
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この病への処方箋は、まず(経営者が)世の中にどうしようもない固定費(変動費にはならない経費)などはないと頭の中を変えることです。“公共料金は下がらない、下げれない”などはその際たるものです。もっと言えば、電力会社も、ガス会社も、もちろん通信、コピー会社も民間企業です。次に、(経営者自身が)自社のコスト構造の全体像を正確に把握することです。
スポーツクラブを経営していれば、人件費23%、エネルギーコスト10%(うち電気6%、上下水3%、ガス1%/プールがある場合とない場合は違います)賃借料17%。そして、その中でウェイトの高い順番から変動費と捉えて、コスト最適化の手法を駆使することです。これを私は“コストの森の全体像をつかむ”と言っています。
世の中には、冒頭のボールペンではありませんが、何と目の前の木しか見ていない、見えていない経営者が多いことか!そして最後は、(経営者)独自の原単位管理(何を基準に目的の経費を管理していくか、売り上げにおける比率か、稼働率か、お客様の数か・・。)を継続して行い、現場にフィードバックし続けることです。こう書いてみると、やはり、この処方箋の薬を一番飲んで欲しいのは国、地方を問わず公務員の方々です。それも、上の役職の方ほど・・。こう思うのは私だけでしょうか?!
(Mr.削減)

