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株式会社コスト総合研究所 代表取締役社長
村井哲之 先生

プロフィール

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ヨーロッパに見るコスト削減の原点

 ヨーロッパの環境先進国へ二週間、視察に行ってきました。
 日本とヨーロッパの、環境とコスト削減に対する意識の違いがはっきりと分かる二週間でした。

 そんな中、デンマーク、スウェーデン、ドイツを回って強く感じたことがあります。
 これまで日本で言い続けてきたことに間違いはなかったな!と。

 驚きました。ヨーロッパにこそ“もったいない”の文化がありました。コスト削減の原点である、“無駄遣いはしない”が到着日からそこかしこにゴロゴロ転がっていました。

 国ごとに列記しておきます。明日からでも家庭や職場で活かしてください。

【デンマーク・スウェーデン編】 (コペンハーゲン、ヘアニン、マルメ)
 ホテルに着くなり、まず、ホテルの照明が少ないし、日本のように異常なまでの明るさがなく、非常に落ち着いた印象を受けました。多分、照明に掛かる電気代は日本の同程度のホテルの半分以下であることは間違いありません。その分、窓を大きく広くして自然光を積極的に取り入れる造りになっています。
また、デンマークでは、地盤が弱く地下は掘り難いため半地下が大半です。ホテルの場合半地下がレストランになっていることが多く、日本ならまず間違いなく暗いために好んで照明を付けますがデンマークは逆です。自然光の取り入れと、テーブルごとに蝋燭を積極的に使用しています。その蝋燭も、お客様が来て初めて着火します。日本なら全て灯してお客様をお待ちするはずです。大きな違いです。

 ホテルの部屋の明るさも日本のホテルの半分以下です。もちろん、一つのスイッチで複数の照明が点くことは100%ありません。スイッチ一つに照明一つです。さらには、コンセント一つ一つにスイッチがついているので無駄な電気(待機電流)も流れません。このことを知らないと、充電したはずのビデオやデジカメ、携帯電話が朝になって未充電と言うことになります。早速、痛い目に合いました。

 また、最近のホテルでは部屋のドアを開けると、廊下の照明がつくようになっています。エレベータには100%閉まるボタンがないことも付け加えておきます。(押すのと押さないのではエレベータの消費電力が全然違います!)「閉まる」ボタンは、ホテルに限らずデンマークではついに見ることはありませんでした。また色々な施設のお手洗いでも結構自動照明が使われていました。かなり古い施設でもそうだったのには驚きました。

 部屋のメモ用の鉛筆も昔ながらの木の鉛筆です。当然色をつけるなどの加工はしてありません。長さも通常の半分です。珍しさも手伝って、こちらの方が持って帰って大切に使おうと思います。ホテルの部屋据え置きの中途半端なボールペンほど捨てられやすいものはありません。プラスチック製ですから処分も大変です。(そのことを証明するように、スウェーデンのホテルには使わないボールペンを入れ、皆に見えるように貯めて置く立方体のガラスの箱がロビーに据付けられていました。中には半分以上、多分1,000本近くの使わないボールペンが入っていました(写真1)。

【写真1】
DSCF0200.jpg

 ということで、私は早速、鉛筆を鞄にしまい込みました。可愛そうに(?)間違いなく誰かへの立派なデンマーク土産になります。但し、国境を越えて無駄なく大切に扱われます。捨てられ焼かれても有害物質は出ません。

 もちろん、部屋には歯ブラシもシャンプーもリンスもありません。髭剃りなんて持っての他です。尚、これからヨーロッパを旅する方のために、スリッパやパジャマ等もないことを伝えておきます。ヨーロッパのそれなりの環境に配慮したホテルには、あるのは石鹸のみ(ホテルによってはシャンプー兼用石鹸もあります)です。それも1日に使うだけの大きさです。タオルはふかふかで水の吸収がいいとても綺麗なものが置いてありますが、決して新品ではありません。また、使わなかったタオルは当然交換してくれません。極めて合理的です。

 さらに、朝食券もそのチェックもありません。泊まった人が決められた時間に食べる、それだけです。朝食券様の無駄な紙代、印刷代が省けます。これはホテルだけに限らず、美術館や博物館の入場の際にも言えます。入り口でお金を払って、そのことを目で確認したらOK、もしくはレシートが入場券の代わりと言う施設が結構ありました。少なくとも日本の様にスポンサー付きの広告や宣伝の入った、キラキラ輝くコート紙の入場券には出会うことは一度もありませんでした。チボリ公園でもそうでした。
 
 駅に改札がないのも同じような発想からだと思います。人は必ず無賃乗車をすると考え、その対策にコストを掛けるのか、その逆の発想でその分人的資源の効率的な配置を目差すのか。日本でも検討に値すると思います。(JRはICカードで、我々個人の趣味志向までを含めてどこまでも追っかけるつもりですが…。怖くなりました!)

 さらにさらに、コペンハーゲンの街中でも多くの“もったいない”の精神に出会いました。まず、街全体に無駄なギラギラした照明がありません。セブンイレブンだろうとマクドナルドやケンタッキーだろうと、全て街の雰囲気を壊さないことが大前提での出店です。日本の京都のローソンやロイヤルホストのような極めて中途半端な街との偽融合ではありません。蛍光灯が一本もないゼブンイレブン。マクドナルドとは思えないおとなしい看板のMAC。カーネルおじさんの見つからない、違う店じゃないかと思われ、少なくとも私は気づかなかったKFC。照明の数から言って、本当に街全体が夜は暗くて大丈夫かな?と心配になるくらいでした。店内も、スポットライトが中心で、“必要な商品を必要なだけ照らす”が基本にあり、今日は開いているのかなと思われる店が沢山あります。また、お休みの店はほぼ全部の電気を落としています。日本のように開店しているのかと見間違い思わず入ってしまう程明かりを点けている店は皆無です。

 ランチをしたチボリ公園の入り口のステーキレストランは極め付けでした。全面ガラス張りで自然光を使いまくっています。天気が良く、少し暑くなってきたのでどうするかと見ていたら、単純に天窓を開けて自然の風を取り込んでいました。当然、テーブルには蝋燭です。明るかったので点灯はさせませんでした。その夜、チボリ公園の帰りに通りかかったら、お客様がいる席だけで蝋燭がゆらゆらと輝いていました。他の照明は見当たりませんでした。昼間、そこのお手洗いを借りました。入り口からして真っ暗です。異国の地です。普通は怖くては入れません。スイッチを押しました。点いたのは地下の踊り場までの階段の電気だけです。階段を下りました。そこのスイッチを押すと今度点いたのはトイレの入り口までの踊り場の照明だけです。トイレに辿り着きました。狭いトイレですが「大」と「小」でそれぞれスイッチが分かれていました。お陰で旅行中は自然に電気を消す癖がつきました。因みに、ここを含めていくつかの施設では男女の便所が共用でした。これにも合理性を感じました。

 それから、我々の活動の拠点となったコペンハーゲン駅も天井全体が採光できるようになっており、また、天井の両側も全て開閉ができる窓の構造で、多分照明の数は同程度の日本の駅の四分の一以下です。決して日本の駅のように明るくはありませんが、日本の駅の明るさまでは必要ないなと強く感じました。日本の多くの駅では昼間もプラットホームの蛍光灯は輝いています。あ〜もったいない!です(写真2)。

【写真2】スウェーデンのマルメ駅の写真
DSCF0189.jpg

 追加で、コペンハーゲン空港もガラス張りでした。中央に、デンマークではここだけで見たエスカレータが2基ありましたが、着いた日も、飛び立った日も動いてはいませんでした。

 ふと気が付きました。ついに一度も飲料の自動販売機には出会いませんでした。街角はもちろんのこと、ホテルにもありません。日本に帰ったら一度日本中の自動販売機が食う電気の量を調べて発表しようと思いました。誰か知っていたら教えてください。

 そう言えば、行きのスカンジナビア航空の食べ残しを考えての食事のメニューには感謝でした。ヨーロッパやアメリカ行きの飛行機では、これでもかこれでもかの食事攻撃が嫌でしたが、それもありませんでした。飲み物にしても“必要な人が必要な時に必要なだけ貰う”が徹底していてかえって気持ち良かったです。本当に合理主義の国民性です。

 スウェーデンには1日もいなかったので、先ほどのボールペン収集以外これと言ってありませんが、当然コペンハーゲン駅と同じように屋根は全て採光できるようになっており、照明も少なかった記憶があるのと、駅のお手洗いが有料(日本円で100円程度)でしたが、熱帯魚が泳いでおりその価値はあったなと思ったのと、ビックマックセットが1,400円もした物価の高さが印象的でした。

 最後に、『合理主義』というと日本には、人間不在の冷たいものと勘違いする人がいます。『合理主義』とは“必要な時に必要なだけのものを使い決して無駄はしない”と言う、日本に古くからある“もったいない”の精神と同じものです。そのために必要なら一致団結もするし、“私だけがしなくても大丈夫だろう”の精神の対極にあるものです。ヨーロッパに残り、根付いていました!

【ドイツ編】 (フライブルグ)
 基本はデンマークと一緒です。照明ごとにスイッチがあります。ただ、コンセントまでにはスイッチがありません。エレベータにも閉まるボタンがあります。ドイツとデンマークの違いは、本当にデンマークは自然の恵みが少なく、その分徹底して無駄を省いた歴史だった気がします。一方、ドイツは黒い森を中心に自然に恵まれていました。その自然の恵みを巧く利用することで、つまりものを大事にすること、自然を壊さないこと、自然から授かったものはいつかは綺麗にして自然に返すこと。つまり、早くから、持続可能な社会を目差してきた、大げさに言えば長い目で見て無駄なコストを削減してきた歴史を感じました。

 フライブルクと言う、キリスト教徒が作った世界で一番美しい教会を中心に作られた美しすぎる街。街中をアルプスからの水が縦横に走る街全体が博物館のような街。誰も汚せる人などいない美しさです。この街を守り続けようとする精神が無駄をしない“もったいない”の精神につながってきている気がします。そしてこれからもそれは守り続けられると確信させる市民であり街でした。