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BEIビジネス倫理研究所 代表
山口謙吉 先生

プロフィール

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第5回 コンプライアンス(企業倫理)実践プログラムの構築(02:行動規範の策定)

■経営者は現実を直視したリスクマネジメントを
今回は、倫理・コンプライアンスプログラム(CP)の構築における最初のステップ「行動規範の策定から実行宣言」を考えてみる。そのために社団法人日本青年会議所が2007年1月に実施した「企業倫理とモラル」という調査結果から企業理念の整備実態を紹介し、意識を喚起したい。

それは企業理念の有無に関する質問で、「有り役立っている」との回答が約2,200社中の16%、「有るが形骸化している」が37%、「無い」が47%、という結果だった。つまり、企業理念のある会社は53%だが、実質的には「全体の84%が無いに等しい」ことがわかった。

今の社会環境下では驚くべき結果といわざるを得ない。その理由は二つある。一つは、「企業理念」の有効性が確保されていなくても会社は成り立っていくということ。しかし、社会的支持が得られるかどうかは、時の経過とともに個々の企業ごとに証明してくれるだろうから、「今さら」といわれそうなことではある。

二つ目は、社会が「企業の社会的責任」という、ある意味、企業に対して社会への貢献に期待を寄せているにもかかわらず、利益の追求を第一としている経営者が多数存在すると思われること。これも今さらといわれそうだが、現在の社会情勢が今までと違うことを知りながら、経営者は目を背けているとしかいいようがない。その結果、不祥事が発生したとき会社がどうなるかは説明するまでもない。

また、この調査結果から、企業倫理の導入やCPの構築は、「行動規範」を作成する前に有効性のある「企業理念」の策定から考えねばならない会社が多いことがわかる。
社団法人日本青年会議所への社会的期待もあるだけに、この現実を今後どのように同団体が対応していくのか、その良心を継続して見ていきたい。また、この調査結果をさらに分析し、会員企業への指導、支援を強化していくことを願う次第である。

■「企業理念」は経営者自身が策定すること
 企業理念の策定とは「企業理念を作る」ということではない。経営者が「自分の『思い』を自ら明文化する」ということである。また、できあがった「企業理念」は、重要なセレモニーとして、経営者自らの自戒と決意を伝える場を設けるべきである。明文化の考え方についてのポイントは、以下の4つが重要と考える。
1.経営者が自分の言葉で、新入社員などでも理解できる平易な言葉で、明確に示すこと
2.社会とどのように共生し、どのように社会に貢献していくのかを明確に示すこと
3.ステークホルダー、特に従業員とどのような関係を築いていくのかを確に示すこと
4.会社をどのような会社に育てていきたいのかを明確に示すこと

■「企業行動規範」の作成
 経営者自ら策定した「企業理念」により、その「思い」が十分伝わるのであれば、必ずしも具体性はいらない。それは、行動規範(会社によっては「行動基準」「行動指針」「倫理綱領」など)で役員や従業員の業務活動全般を網羅し、どう行動、対処すべきかを具体的に示すからである。

内容は、役員、従業員の分掌業務を中心に、関係ステークホルダーとの関わりや応対などについて、会社としてのあり方、接し方、しなければならないこと、してはいけないことなどを明確に示したものでなければならない。盛り込まなければならない重要な検討項目は次のものが考えられる。

1.企業理念・・・・経営者の「思い」
2.社会の摂理・・・理屈抜きに「良いものは良い」「悪いものは悪い」ということ
3.社会規範・・・・国内外の法令、社会通念、商習慣など
4.社内規範・・・・規程類、規範マニュアル類
5.ステークホルダーとの関わり、対応
6.他社不祥事例の発生原因分析と防止策、抑止策
7.相談や不適切行為の連絡・通報窓口

また、作成に当たってもっとも重要なことは、会社の体裁を考えることより「従業員の実効性」を優先することだ。つまり、従業員が使えない抽象的な内容表現のものであったり、「べからず集」的な、ただプレッシャーとなるようなものを作ったりしても、形骸化が進むだけである。そして一方で、この作成内容の背景には、常に「社会の監視の目」があること忘れてはならない。

実行宣言(公表)の意味
できあがった「行動規範」は、経営者自らが実行宣言し、内外に公表するこが必要だ。これによって、はじめて企業倫理の実践がスタートする。公表するということは、自らを律するという一方で、社会からの具体的な監視の目ができたということでもある。外部から見られるということは、役員、従業員の不適切な言動の抑制となると同時に、企業倫理の実効性が高まる要因ともなる。また、このことは好感度企業というラベルが社会から与えられることへの大きな力になるのである。 

しかし、成果はなかなか目に見えて現れはしない。企業倫理の実践は、「地道な積み重ね」であり、「中長期的な取組」が基本であるということだ。また、企業倫理の実践でのもっとも重要な要素が役員、従業員、つまり「人」であるということも忘れてならない。