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BEIビジネス倫理研究所 代表
山口謙吉 先生

プロフィール

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番外編(06) 中国製冷凍ギョーザ中毒事件に思う(2)

 今回の中国製冷凍ギョーザ中毒事件で明らかになった日本の食糧事情と輸入冷凍食品の実態には、驚かされることばかりだ。

■行政の対応について

 ひとつは、日本の食料自給率が40%程度と低いことだ。欧米先進各国との間に20%〜30%という食料後進国ともいえるほどの開きがあることに驚かされる。海外からの食料輸入量の確保が変化したら生活がどう変わるのか国民が考えさせられる環境にあることは、国のあり方としてはいかがなものなのか。

 たとえば、現在食料輸出国の中国が気象状況や国内需要の変化などから、将来的には一転して食糧輸入国になる可能性を示唆している向きもある。そうなると、中国への食料依存度の高い日本はどこからその分を調達することになるのだろうか。世界からの食料の輸入競争相手には手強い中国も入ってくるわけで、さらに厳しい状況が考えられる。

 もうひとつは、この事件で厚生労働省の危機管理意識の低下を疑わざるを得ないことだ。同省は年間8万件以上の輸入食品の検査を実施している。しかし、冷凍ギョーザのような原材料が多数混在している加工食品の残留農薬などについての検査は、検閲所でするのが難しいようで、その対象外となっている。

 しかしながら、諸手をあげて安全とはいい切れない中国の食材事情を熟知している同省としては、たとえ残留農薬の検出が難しくとも国民の安全を第一に考えるのであれば、他の食品と同様の検査をするべきであったと思うのは筆者だけではないだろう。後日厚労省は、同様の検査を実施すると発表している。
 
 行政には今後の日本の将来を展望した長期的対策を期待するしかないが、欧米で進んでいる民間ベースでの継続的な行政監視のようなチェック機能がほしいところである。

■食品を扱う企業について

 今回の事件報道によると、昨年の早い時期に情報の公開をしていれば被害の拡大防止をする機会が何度かあったようだ。それは、中国製冷凍ギョーザに対する各社への苦情で、2007年4月から年末の中毒事件発生までの間に14件出てきているとのことだ。

 各社はそれらの調査結果を、流通過程で油性分が付着したとか、それらは個別の事象であるなどと判断し、そのままにしていたらしい。これらはいずれも再検査で農薬などが検出されている。これらのことが事実であるならば、各社の対応は「不作為」としかいいようがない。このようなことで被害を拡大させ、社会を不安に落とし込めた責任は重大である。

 食品に関しての事件は近年目立ってきており、特に昨年は多発している。1月の不二家に始まり、年末にかけての船場吉兆やマクドナルドなど著名企業の不祥事が毎月のように発生していた。確かにすぐ生命に関わるという事件ではなかったにせよ、このような社会状況を目の当たりにしながら、各社の担当者は苦情を受け、対処していたわけである。 

 何を考えながら苦情への対応をしていたのか。食品を販売している会社としての責任感やそこにあるはずの危機意識の低さにおどろかされる。「食」に対する平和ボケとしかいいようがない大失態だ。最近は特にこのように対岸の火事を無視した企業の対応例ばかりでウンザリしてくる。ただ今回、亡くなられた方が出なかったことだけが不幸中の幸いである。

 他の企業でも業種に関係なくこの事件の教訓を活かさなければならない。「火のないところに煙は立たず」という諺にもあるとおり、例え小さなことでも自分の身に起こったこととして、何かあると考えて対応することができるような従業員の育成を通じた、不祥事の未然防止対策の強化を願ってやまない。

■既存の企業倫理・コンプライアンス実践のあり方の限界か

 今回の事件は、企業倫理・コンプライアンスの実践について、たいへん大きな課題を企業に突きつけている。

 事件を起こした企業でも企業倫理・コンプライアンスにはそれぞれに取り組んでいたことだろう。しかし、業務のその場、その場における対応について受けた教育が活かされていなかったということで、従業員に「教育をしているから大丈夫だ」という企業の自己満足がまたしても問題を起こしたといってもいいだろう。

 教育は教育でしかなく、たとえマニュアルや実践Q&Aなどを備え付けていても、業務の実際において活かすも、活かさないも従業員個々の資質に頼るところが大きい今の企業倫理・コンプライアンス実践のあり方が問われ、従業員教育の限界を示している事件でもある。