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ITガバナンス
IT投資対効果(ROI)の評価がなぜ容易ではないのか
IT投資対効果(ROI)の課題は、古くて新しいものである。筆者もだいぶ前から雑誌や単行本で意見を述べているが、必ずしもこれは、という絶対的な解があるわけではない。ここでは、なぜ、このテーマが厄介なものであるかを、簡単に解説したい。
おそらく1980年代前半くらいまでであれば、ITROI(ITという言葉もなかったわけだが)の評価はそれほど厄介ではなかった。この時代のITは、基本的にバッチ処理であったため、ビジネスプロセスとのインタフェースは限定されており、たとえばビジネスの結果、伝票集計等の計算を代行する、ある意味で自動そろばんのようなものであった。このようなITであれば、それまで人手で伝票を集計していた業務を、コンピュータでまとめて計算した場合のROIは、容易に算出可能であったはずである。
ところが、最近では、ITの発展によって、ビジネスプロセス上の大半にITが組み込まれた状態になっている。さらに、最近では、インターネットショッピングなどのように、ITなくしてあり得ないビジネスモデルも存在している。このような状況では、得られるはずのリターンがITによる効果なのか、ビジネスプロセスの改善による効果なのかが明瞭ではなくなっている。要は、ビジネス全体の評価をせずに、ITのみの投資対効果をしても意味がないし、そもそもITのみを切り出すことが困難という状況となっている。
このような状況では、かつてのITが存在しない状況にITが出現した形での投資対効果の評価は、はっきりいって意味がない。したがって、現存するビジネスプロセス上のITを置き換えた場合という想定で、ITROIを計算する場合が多いはずである。たしかに、既存ビジネスプロセスがあまり変化しないならばそれでいいが、ビジネスプロセスが大幅に変化する場合、業務アプリケーションが統合化されたカバレッジが拡大し、影響が多方面にわたる場合、さらに、インターネットショッピングなどの全く新規のビジネスモデルの場合は、IT単独の評価が難しい。では、このような場合、どうすればいいか? まず、ビジネス全体を評価することである。インターネットショッピングの場合であれば、インターネットショッピング・ビジネスモデルの投資対効果を算出し、投資の妥当性を判断すべきであろう。その結果、投資OKであれば、ITの実現方式に関して、代替案を加えた数案での評価を行うべきである。
次回は、上述した業務系と違い、投資対効果そのものの計算がしにくいEメールなどの情報系に関して、述べることとする。

