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ナナ総研
福西七重 先生

プロフィール

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トップ・マネジメントの本質は、垂直型コミュニケーションの早さ、的確性の確保にある

 社内コミュニケーションとは、一般に「社内広報」といわれますが、そこからイメージされるのは、「社内報」など社内メディアを中心としたコミュニケーションです。しかし、その本質は「経営目的を達成するためのマネジメント」にあります。
 前回と今回の2回にわたり、社内広報に詳しい、ジャーナリストの川崎明氏にお話を伺います。

ダイレクト・コミュニケーションを重視した創業者

 松下電器産業の創業者・松下幸之助氏は、創業2年目の1920年、早くも全従業員28名のコミュニケーション組織「歩一会」を結成し、さらに1927年には、金融恐慌のさなか「歩一会々誌」と「松下電器月報」という、社内外に向けたコミュニケーション・メディアを創刊している。これは、他の多くの経営者と異なる独自の経営意図を、全従業員と販売店にダイレクト・コミュニケーションしたかったからに他ならないと思われる。
 時代は下り、1946年に創業した本田技研工業の創業者本田宗一郎氏は、研究や設計の現場を歩き回り、車への情熱と意地を従業員に直接伝えた。そこから、車づくりに賭ける経営トップのミッションを汲み取った幹部従業員が数多く育ったことは今に語り継がれている。

企業存続の鍵を握る社内コミュニケーション

 このように、創業経営者がダイレクト・コミュニケーションを重視し、活用した例は、今日までわが国の経済界でも限りなく多い。
 しかも、このようなダイレクト・コミュニケーションは、創業期の経営を支えただけでなく、大企業に成長した今日、企業理念や従業員の行動規範として引き継がれ、定着化している例も多い。
 しかしながら、後継の経営者によっては、経営環境の変化に適応できず、ダイレクト・コミュニケーションが存続の瀬戸際に立たされている企業も、残念ながら多数出現している。
 さらにわが国は、05年を境に人口減少に転じ、07年からは団塊世代が現役を引退する。
 こうして激変する経営環境のもとでは、後続経営者の適切な経営判断と、素早い社内コミュニケーション(社内広報)とが、企業存続の鍵を握るようになってきているといえる。

編集部門と経営ボードの連携不足

 ところが、社内広報の本来の意味、経営上の価値、目的があいまいなため、トップ・マネジメント(ICM=インターナル・コミュニケーション・マネジメント)として位置付けられていない企業が意外に多いのも、実態である。
 媒体制作部門と経営ボードとの連携が不十分なために、ICMとして機能していないケースが多いのだ。このことが、事故や不祥事の発生につながる可能性も容易に察しがつく。
 主な理由は、ICMの経営論が体系化されていないことにある。さらには、広報媒体の制作は技術論に影響されやすく、制作部門や担当者の裁量に委ねられやすい。そのため、リストラ経営においては、アウトソーシングの対象にもなりやすく、ことさらにトップ・マネジメントとの乖離を生みやすい。

現状は水平型社内コミュニケーションだが

 今日、経済の現状をみればわかるように、大企業といえども創業精神にかかわりなく、経営資源の選択と集中は避けて通れない。
 であればこそ、ICMが喫緊の経営課題になるのである。ただし、ICMを媒体の制作だけに矮小化しては、経営目的の達成は不可能といっていい。
 ICMの本質は、経営ボードの意思決定と権限委譲にもとづく指示命令や、ホウ・レン・ソウなど、上下組織間の垂直型コミュニケーションの早さ、的確性の確保にある。
 しかし昨今、長期にわたるリストラ経営がもたらした労使関係や勤労価値観の変化は、従業員個人の意見、職場の声を汲み上げ、すぐれた業績や貢献事例などを情報交換する、水平型の社内コミュニケーションの重要性を高めているといえる。
 ここにこそ、伝統的な社内報・社内誌が分掌すべきICM上の役割があるといっていいと思われる。