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日野孝次朗 先生

プロフィール

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知的な財産ってなんだろう!?

「財産」とは何ですか? 
と聞かれたら、ちょっと答えに迷ってしまうのではないでしょうか。

家は財産ですか? 
自動車は財産ですか? 
ダイヤモンドは? 
貝殻は?

 もし浜辺を歩いていたとして、そこに落ちているきれいな貝殻を拾って持って帰った場合。その貝殻を盗んだことになるかというと、そうはならないですね。
 浜辺に落ちていた貝殻は誰のものでもありません。しかしそれをあなたが拾ってポケットに入れた後、見知らぬ誰かがそのポケットの中の貝殻をコッソリ取り出して持って帰ったとしたらどうでしょう。これは窃盗罪になりそうです。同じ貝殻なのに、一瞬の違いでこうなるわけです。

 どうやらこの世の中では、自分だけで独占したいと思うものは財産として保護されるという原理があるようです。浜辺に落ちている貝殻は誰からも独占されていません。しかし誰かがポケットに入れた瞬間にそれは保護の対象となって、それを他人が盗むと窃盗罪として処罰されます。

 つまり、最初に拾った人が貝殻を独占したいと思った瞬間に貝殻は「財産」になったということです。

 これも当たり前と言えば当たり前で、法律以前の話として理解できることだと思います。つまりこの世の原理です。このように、財産というものは、それを見た人間の意識次第で生まれたりなくなったりするもののようです。独占したいと思われれば財産だし、どうでもいいやと思われれば財産ではないのです。
 水は空から降ってくるからタダだと言うこともあれば、ペットボトルに入れて売られていることもあるのです。法律的にこれが財産で、これは違うと区別する根拠規定は見当たりません。

 では、貝殻のように物体として存在するものでなく、文章とか、写真とか、イラストといった物体として存在しないものはどうでしょうか。これらも最初に手に入れた人(創った人)が、それを独占したいと願った場合には保護されると考えるのがこの世の原理に沿うのではないでしょうか。

 つまり、物体として存在しない財産というものがありうるということです。これを無体財産と呼んだりします。無体財産の中には、知的活動によって生まれるものもあって、これらを知的財産と呼びます。この呼び名の方がよく使われています。

 著作物というものも、この知的財産の一種です。著作権法の中で、著作物がこういうものであると定義がされ、著作権者は著作物を独占的に利用する権利を持っているとされています。先ほども言いましたが、世の中には、最初に財産を手に入れた人に「独占権」を与えて保護するという考え方があって、これは所有権や著作権法だけでなく、特許法、意匠法、商標法、種苗法、所有権などでも共通する原理です。

 著作権法では、他人の著作物を勝手にコピーなどしたら著作権侵害ですよ、と定められています。

民法第709条
<故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。>

 法律上保護される利益を侵害したわけですから、著作物を勝手にコピーすることは明らかに不法行為だとわかります。だからといって、著作権侵害ではないなら法的問題がないとは言い切れませんね。
 著作権の侵害ではなくても迷惑な行為はいろいろあるわけです。不法行為の概念は広いのです。だから著作権を侵害していないならどんなものをどんなふうに利用しようと問題ない、ということではないのです。人に迷惑をかけたら償わなければならない。不法行為にはいろいろな種類があるのだ。その一種として著作権侵害があるのだ。そういうふうに考えておいていただきたいのです。

 迷惑行為が民法第709条の不法行為にあたるなら損賠償請求を裁判所が認めてくれる。さらに著作権侵害でもあるということなら、侵害行為の差止めも認めてもらえるし、犯罪でもあるので警察などが処罰してくれることもありうると、こういうことなのです。