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日野孝次朗 先生

プロフィール

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今考えないと後悔する! (2) 著作権保護期間の問題

 「著作権の寿命が50年でも100年でもどっちでも良いことだ」――そこまではっきりと意識していないにしても、多くの会社では著作権保護期間のことがあまり意識されていません。むしろ社員が著作者として権利主張することの方を恐れています。「権利を自社で全部保有しておけば安心だ」という気持ちはわかります。しかし、もしその著作物の商品価値が50年後にもなお存在していたとするなら、「もっと長く保護できたのに……」と後悔することになるかもしれません。

 「ピーターラビット」「星の王子様」など、商品価値がありながら著作権が消滅していく作品があります。もうすぐ日本でも、資産価値の高いキャラクターの著作権が消滅する時期にさしかかってきます。関係するのはキャラクター関連ビジネスだけではありません。たくさんの企業や自治体でキャラクターやロゴ、企業デザインなどを保有していますが、それらの著作権はいつまで存続するのか、各企業や自治体の担当者は把握しているでしょうか? 

 あなたの会社ではどうですか? 失礼ながら、何も考えていない、というのが実情ではないでしょうか。商標登録はしていたけれど、著作権の方は全く考えていなかった……。多くの会社がそのような状況にあると思います。しかし、もし著作権が消滅したらどうなるのでしょう。この場合、インターネットで無断掲載されても文句がいえません。アダルトサイトで勝手に使われても手も足もでません。もちろん商標登録をしていたとしても対抗できません。著作権は低コストで、しかもほとんど全世界で権利を主張できる極めて強力な権利ですが、莫大な費用がかかる商標登録をしていながら、著作権のことになると保護の工夫に考えが及ばないようです。

 知財立国にしてはあまりにさびしい状況ですが、保護期間の問題で後悔する企業がこれから増えてくると思います。世間でキャラクターに高い顧客吸引力が認められるようになってから久しいですが、そろそろ権利消滅が心配になってくる頃ではないでしょうか。元をただせば、デザインを制作する際に保護期間のことを念頭において権利処理していればよかったのですが、なにしろ50年以上後のことを想定するわけですから、とても保護期間のことまで考えが及ばないでしょう。

 権利を長くする方法としては、特定の個人が著作者であるという事実を世間に証明できる体制を取っておくことがまず基本になります。企業にとっては社員が作者として名を売ることが怖くて仕方がないので、全ての著作物を職務著作にしてしまうわけですが、目先の都合だけで片付けないで、長期的な見通しを持って判断していただきたいと思います。

 無理に職務著作にしなくても契約によって権利を保全することができますし、著作者名を公開しないで著作物を商業利用することも可能です。著作者人格権だけは著作者に残りますが、現実に人格権を法人として行使しなければならないケースはほとんど想定できません。

 ところで、保護期間を長くする上で重要な工夫の一つとして文化庁の登録制度があり、私はこの制度の有効活用をおすすめしています。特許庁の登録のように権利を発生させるための制度ではありませんが、文化庁の登録制度は保護期間といった点では、使い方次第でひじょうに重要な意味を持ちます。しかし文化庁の登録制度の存在自体が知られておらず、有効な活用ノウハウが定着していません。

 今いくら権利をしっかり保護したところで、あとで権利が消滅して後悔するようではもったいない話です。今からでも権利処理の在り方を根本から見直してみましょう。権利が消えてからでは手の打ちようがありませんが、作者が存命であれば、過去の作品でも工夫のしようもあります。もし心当たりがあるのであれば、あきらめないで急ぎ検討してみてはいかがでしょうか。