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Vol. 21 労働基準法改正案成立の可能性と実務対応
Vol.21 労働基準法改正案成立の可能性と実務対応
昨年の通常国会に提出されて以降(H19.3提出)、1年8か月近く審議が一向に進まなかった労基法改正案の成立見込みが高まってきました。
政府案では、月間80時間以上の時間外労働に対して、割増率を25%から50%に引き上げるとしていましたが、自民・公明両党において、月間60時間以上から割増率を引き上げるということで修正合意がされていました。民主党はこれに対して、全ての残業に対して5割増しとするよう主張し、与野党調整が暗礁に乗り上げていましたが、臨時国会の会期末が近付くにつれ調整に転じたようです。報道のとおり、民主党が与党修正案を受け入れ、月間60時間以上の時間外労働に対して割増率を50%とすることで同意しました。難産に難産を重ねた労基法改正案もようやく本国会中の成立目途がついたようです。(参考: 08.11.13 毎日新聞)
本会期末に同法案が成立したとして、次に問題となるのが企業等の実務対応準備です。同法案の施行日は「公布の日から1年以内」とされており、遅くとも来年11月には施行されることとなります(恐らくもっと早いと思いますが)。
法施行に伴う対応として、最も困難性が予想されるのは、賃金計算・支払システムの仕様変更です。
当然のことながら、これまでは、労働協約上の定めでもない限り時間外労働時間数に応じて割増賃金率を変動させる必要はありませんでした。今後は、賃金計算・支払システムにおいて、残業時間数が月間60時間未満か以上かを識別の上、それぞれに適切な割増賃金率(前者25%、後者50%)を適用する仕組みに変更しなければなりません。手計算で対応している会社、もしくは柔軟なシステムであれば対応はやさしいと思われますが、問題は自社仕様で賃金計算・支払システムを独自に構築している場合です。場合によっては、既存システム上での対応が困難なケースも想定されます。とすれば、一刻も早く対応を検討していく必要があります。
また、同法案では中小事業主については当分の間、同割増賃金引き上げに係る規定を適用しないとしています。具体的には、資本金額等が3億円以下(小売・サービス業は5,000万、卸売業が1億円以下)及びその常時する労働者数が300人以下(小売業50人、卸売・サービス業100人以下)が中小事業主にあたるとしています(法案要綱は厚生労働省サイト参照(PDF)。
注意すべきは、この“中小事業主”の範囲です。これは1事業場単位ではなく、企業規模全体でみることになります(厚生労働省労働基準局監督課に確認済)。したがって、流通・外食など一つの事業場単位では50名以下であったとしても、企業規模全体で先の労働者数を超えているのであれば、中小事業主に該当せず、同じく割増賃金引き上げの規定が適用されることとなります。また、労働者には短時間のパート・アルバイト社員も当然含むものと思われます(同様の運用例として、安衛法における産業医、安全衛生委員会等の「50名以上の労働者」が想起されるもの)。
小売・外食業等で全国展開している企業についても、今回の割増賃金引き上げは他人事ではなく適用されることを想定の上、対応策を検討する必要があるでしょう。

