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No.17 名ばかり管理職問題に対する新通達と実務対応
1.はじめに
今年4月1日、「管理監督者の範囲の適正化について」の通達(基監発第0401001号)が、厚生労働省から全国各地の労基署に示されました(資料:労働政策研究・研修機構メールマガジン)。
同通達はその名の通り、昨今、たいへん大きな話題となっている「名ばかり管理職」問題について、当面、労働基準監督機関がどのような対応を行うのかを明らかにしたものです。以下に、同通達ポイントとその意義、同通達をふまえた企業の実務対応を解説します。
2.「名ばかり管理職対策新通達」のポイントについて(筆者要約)
(1) 従来からの行政解釈を修正・追加するものではない(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発150号を維持)
(2) 労働基準監督機関として、労基法上の管理監督者の趣旨および解釈例規の内容について(労使双方から)正しい理解を得られるよう十分な周知を行う
(3) 管理監督者の取り扱いについて労働基準監督機関に相談があった場合、「管理職=管理監督者」ではないことを明らかにした上で、上記の趣旨および解釈例規の観点を十分に説明
(4) 管理監督者の取り扱いについて問題が認められる恐れのある事案については、適切な監督指導を実施すること⇒管理監督者の範囲の適正化について遺憾なきを期されたい
3.新通達の意義とは
日本マクドナルド事件(東京地裁平成20年1月18日)後、いわゆる「名ばかり管理職」問題が大きくクローズアップされています。NHKを初めとしたマスコミにおいても大きく報道されるとともに、国会において、この問題が再三、取り上げられました。
このような中、厚労省が本年4月1日付で示したのが、同通達です。これは本省の監督課長が、各都道府県の労働局長に今後の監督指導の適正化を求めたもので、同通達を受け、各都道府県に所在する全国300以上の労働基準監督署において、同通達に基づく監督指導等が行われることになります。
その内容については、上記の通り、管理監督者の適用範囲についての見直しはされていません。本通達は「管理監督者性の範囲」に関するものではなく、労基署等の監督指導の「運用」に関するものといえます。その運用について、上記(2)、(3)、(4)の通り、従来からの管理監督者の範囲の周知と監督指導の徹底を確認したものです。
ここまで読まれたご担当者の多くは、「新通達が出たとはいえ、特に今までと大きな変わりはないのでは」と感じたのではないでしょうか。しかし、同通達の文言だけからそのような結論を出すのは早すぎると思われます。
というのも、従来、この「管理監督者」の範囲は、その法令上の文言と行政解釈にあいまいさが残されていたため、その監督指導が十分に徹底されてこなかったきらいがあります。これに対して、今回の新通達では、(4)の通り「管理監督者の取り扱いについて問題が認められる恐れのある事案については、適切な監督指導を実施すること」と指示されています。この「問題」とは、通達上、以下のようなケースを想定しているようです。
●「管理職」について十分な権限、相応の待遇等を与えていないにもかかわらず、労基法上の管理監督者として取り扱っている
● 労働時間等が適切に管理されず、割増賃金の支払や過重労働による健康障害防止等に関し労働基準法等に照らして著しく不適切な事案
つまり、「名ばかり管理職」であり、長時間労働が放置され、健康障害等の恐れがあるケースなどについては、「適切な監督指導」を行うことを明確にしたものです。この点を明確にした本通達の意義は小さくないものと思われます。
4.企業の実務対応とは
同通達を受けて企業の実務対応としてまず真っ先に行うべきは、自社管理監督者の範囲の点検です。管理監督者として取り扱ってきた役職者が果たして法律上の管理監督者に該当するのか、点検作業を早急に行う必要があります。
おそらく、業種、規模を問わず、この点検を行ってみると、その大半は何らかの問題があると思われます。たとえば、人事考課権、採用権等が乏しい、経営への参画が不十分、あるいは出退勤の自由が保障されていないなど。以上の点検を通じて、自社の課題を明確にしておき、その対策を検討しておくことが何よりも求められるところです。
これを労基署等の調査、指導がなされたあとに、取り組んでも後手になり、自社の企業風土に適合的な対策が取れなくなる恐れがあります。この事前対策において、とりわけ重要であるのは「長時間労働対策」です。この問題への真摯な取り組みが認められれば認められるほど、先の新通達にいう「監督指導の徹底」の対象には当たらないという解釈もあり得ると思われますので、先行して点検・実施することをおすすめします。
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