|
No.15 新法への実務対応チェックポイント1労働契約法
1.はじめに
平成20年3月1日に労働契約法が、同4月1日に改正パート労働法が施行されることになりました。また、改正最低賃金法の施行は、同7月1日を予定しています。
これら3法の施行に当たり、企業の実務担当者はどのような点を最低限注意し、実務対応を準備すべきでしょうか。本コラムでは、まず労働契約法への実務対応ポイントとして、3点ほどご紹介します。
●関連リンク:労働契約法の概要、同法施行日ほか
<労働契約法への対応チェックポイント>
(1)就業規則規定の周知(特に支店等における周知〜掲示・配布他〜)
(2)就業規則不利益変更時の手続き遵守(意見聴取、労基署届け出等)
(3)有期雇用契約における解雇運用の適正さ(「やむを得ない事由」限定)
2.労働契約法施行に伴う実務対応とは
結論からいえば、労働契約法の施行に伴い、企業の実務対応を大きく改める必要性はさほどありません。しかし、幾つか再点検すべき実務対応上のポイントがあります。
その代表例といえるのが先に挙げた(1)就業規則規定の周知であり、(2)変更時の手続き遵守です。今後、これら人事担当者が当然行うべきことを怠った場合、いざ会社が懲戒処分・就業規則変更に伴う処分等を行おうとした際に、大きなマイナス要因として働く恐れがあります。また(3)の有期雇用契約の中途解約も気を付けておきたいポイントです。以下に解説します。
(1)就業規則の周知について
たとえば、本社では就業規則の作成、周知、労基署への届け出がなされている一方、各営業所レベルにおいては就業規則を備え置き、周知していない会社があったとします。この場合、同営業所において問題社員がおり、いざ懲戒解雇処分を行うとしても、その営業所レベルで就業規則の周知がされていない場合、同懲戒処分が無効とされる恐れがあります。代表的な裁判例としは、フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日第2小法廷判決)があります。
同判例法理を、労働契約法7条が明文で確認をしたことから、一層、この周知の重要性が高まっています。本社のみならず、各営業所・支店などの事業場レベルにおいても、就業規則を見やすい場所に置くなどの「周知」がなされているか、改めて再点検を行う必要があります。
(2)就業規則変更時の手続きについて
労働契約法11条で確認されたものとして、就業規則変更時の手続きがあります(就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条及び第90条の定めるところによる)。
就業規則を作成・変更した際には、従来から労基法89条、90条に基づき、従業員過半数を代表する組合または過半数代表者から意見聴取を行い、同意見書とともに、労基署に就業規則を届け出ることが義務付けられています。しかし、この義務付けは使用者が国に対して行うことが課されたものであり、この義務違反が就業規則変更の効力にどのような影響を与えるのか、法律上、定かではありませんでした。
従来の下級審判例などでは、この手続き懈怠をもって、就業規則の効力には直接、影響を与えないと考えられてきたものです。これに対して、今回の労働契約法では、この手続き懈怠のみをもって、就業規則の効力を否定するものではありませんが、従来に比べ、その手続きの重要性を確認したと認めることができます。今後、裁判所は同手続きを懈怠している企業の就業規則不利益変更については、その合理性審査を更に厳しく行う可能性もあります。したがって、就業規則変更の際には、必ず同手続きを履行するべきと思われます。
(3)有期雇用契約の中途解約について
また労働契約法17条において有期雇用契約を会社側が途中解約する、つまり「解雇」を行う際のルールが明確になりました。それには、「やむを得ない事由」であることが求められます。従来から、有期雇用契約の途中解約は難しいとされておりましたが、実定法において、その旨明確に確認された意義は少なくないものと思われます。
自社就業規則において、パート・アルバイト・契約社員などの有期雇用契約者の解雇事由を「甘め」に設定している会社では、同法施行により「やむを得ない事由」でなければ、解雇できない旨、再確認しておく必要があります。
3.最後に
今回は労働契約法施行に伴う実務対応のポイントとして3点ご紹介しました。もちろん労働契約法は非常にコンパクトな法律とはいえ、実務対応ポイントはこれに留まるものではありません。労働契約法を確認の上、自社において見直すべきものがあれば、早め早めに対応する必要があります。

